精神医学を再考する
本書は医療人類学分野を代表する頭脳であるクラインマンが長年の研究の精髄を示した、現代の古典である。
各章は、精神医学の現状に向けて提起された命題のそれぞれを考察している。曰く、「精神医学的診断とはなんだろうか?」「社会的関係と文化的意味は、精神疾患の発症と経過に影響を与えるか?」「精神科医はどのように癒すのか?」等々。
こうした学問分野の根幹を、学問の枠組み内で評価する循環論法的とも言うべき思考への自省と批判が、本書の底流にある。著者は非西欧の精神医療に関するデータの地道な収集によって現代精神医学に内在する不可視のドグマをあぶりだし、その知見を臨床で実践することを使命としてきた。本書では、基本命題への練り上げられた回答を自ら示すという形で、研究の成果を凝縮して読者に伝えようとしている。
「精神科医を含む多くの臨床家は、いかなるルートをたどろうとも、その臨床家の生涯の途中でこの「文化的な知識」が圧倒的にものをいう地点(難所)を通ることになるのだと思う。それを強く自覚するかどうかが、その後の各人の登攀ルートの分かれ道になるのではないか……今日、生物学的精神医学が全盛の時に、最も必要となるのがこうした視点なのである。」
(「訳者あとがき」より)(みすず書房サイト
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